1章:はじめに:GLM 4.5シリーズとは?
GLM 4.5シリーズは、オープンソースAIコミュニティにおける最新の画期的な成果として登場しました。このシリーズは、GLMファミリーからリリースされた2つの強力な大規模言語モデル、「GLM 4.5」と「GLM 4.5 Air」で構成されています。
GLM 4.5シリーズは、単にテキストを生成するだけでなく、推論、コーディング、そしてエージェント機能を一つのシステムに統合するように設計されており、多岐にわたるタスクでその能力を発揮します。
主要スペックとモデルの概要
• GLM 4.5:
◦ 総パラメータ数: 3550億
◦ アクティブパラメータ数: 320億
• GLM 4.5 Air:
◦ 総パラメータ数: 1060億
◦ アクティブパラメータ数: 120億
両モデルともに、128,000トークンという非常に大規模なコンテキスト長をサポートしています。
Mixture of Experts (MoE) モデルとしての特徴
GLM 4.5とGLM 4.5 Airは、Mixture of Experts (MoE) モデルとして構築されています。これは、特定のタスクに応じて異なる「専門家(Experts)」を活用することで、効率的かつ高性能な処理を可能にするアーキテクチャです。これらのモデルは、22兆トークンという膨大な量のデータで学習されており、多様なタスクでパフォーマンスが最適化されています。
革新的な「ハイブリッド思考モード」
GLM 4.5シリーズの大きな特徴の一つは、「ハイブリッド思考モード」を備えている点です。この機能により、モデルはタスクの性質に応じて、深い推論とツール使用を伴う思考と、高速な非思考応答の間で切り替えることができます。これは、AlibabaがQwen 3シリーズで採用したアプローチと類似しており、速度と精度の両面で最適なパフォーマンスを提供します。
トップレベルの競争力
GLM 4.5シリーズは、その総合的な性能において、業界のトップモデルと遜色ありません。エージェントタスク、推論、コーディングを含む12のベンチマーク評価において、GLM 4.5は全体で3位にランクインし、GLM 4.5 Airは6位でした。これは、OpenAI、Anthropic、Google DeepMind、Xi、Alibaba、Moonshot(新しいKim K2モデルの提供元)、およびDeepSeekのモデルと直接対決できるレベルであることを示しています。特に、数学やその他の推論タスクでは、GLM 4.5はClaude、GPT-4.1、Gemini 2.5 Proといったモデルを一貫して上回る性能を発揮しています。
2章:GLM 4.5の卓越した性能
GLM 4.5シリーズは、その驚異的な性能により、オープンソースAIの分野で新たな「王者」としての地位を確立しました。その能力は、業界トップレベルのモデルと肩を並べ、特定のタスクではそれを凌駕することもあります。
業界トップクラスのベンチマーク評価
GLM 4.5シリーズは、AIの主要な能力を網羅する広範なベンチマークで高い評価を受けています。
• 12のベンチマークでの総合ランキング: GLM 4.5は、エージェントタスク、推論、コーディングの12のベンチマークをカバーする評価において、総合で第3位にランクインしました。一方、GLM 4.5 Airも第6位という高評価を得ています。
• 競合他社との比較: これらのランキングは、GLM 4.5シリーズが、OpenAI、Anthropic、Google DeepMind、Xi、Alibaba (Qwen 3シリーズ)、そしてDeepSeekといった業界を牽引するモデルと直接競合できるレベルにあることを示しています。特にGLM 4.5は、「Claude Opus 03」のようなモデルとも非常に良い勝負ができると評価されています。
ハイブリッド思考モードの導入
GLM 4.5シリーズの革新的な特徴の一つは、「ハイブリッド思考モード」を備えている点です。
• 機能の概要: このモードにより、GLM 4.5はタスクの性質に応じて、**「深い推論とツール使用を伴う思考」と「高速な非思考応答」**の間で切り替えることができます。これにより、多様な要求に対して最適な応答速度と精度を両立させることが可能になります。
• AlibabaのQwen 3シリーズとの類似性: このアプローチは、AlibabaがQwen 3シリーズで採用した方法と類似しており、モデルがタスクに応じて思考プロセスを最適化する能力を持つことを示しています。
推論能力の高さ
GLM 4.5は、特にその優れた推論能力で際立っています。
• 一貫した優位性: 数学、GPQA、その他多くの推論タスクにおいて、GLM 4.5は一貫して高い性能を示しています。
• 競合モデルを上回る性能: その推論能力は、Claude、GPT-4.1、そしてGemini 2.5 Proといったトップモデルをも上回ることが報告されています。
• 「探偵のパズル」問題での実証:
◦ モデルの推論能力を示す具体的な例として、「探偵のパズル」問題があります。これは、盗難事件に関わる4人の容疑者(Alice、Bob、Charlie、Dana)の発言から、誰が嘘をついているか、誰が犯人かを論理的に導き出す非常に難しい問題です。
◦ GLM 4.5は、この複雑な問題において、論理的な矛盾を評価し、正確な推論プロセスを示すことができました。最終的に、Bobが泥棒であり、Danaが嘘つきであると正確に特定し、その思考プロセスは非常に詳細で論理的でした。これは、ほとんどのモデルにとって非常に難しいプロンプトであるにもかかわらず、GLM 4.5が優れた推論能力を持つことを明確に示しています。
3章:GLM 4.5が提供する多様な機能と活用事例
GLM 4.5シリーズは、その卓越した推論能力に加え、強力なコーディング能力と高度なエージェントツールを備えており、多岐にわたる実用的な活用が可能です。
強力なコーディング能力
GLM 4.5は、複雑なアプリケーションから特定のコードスニペットまで、驚くべき精度で生成できるコーディング能力を持っています。
• Flappy Birdsゲームのワンショットでの生成とUI/機能の精度: GLM 4.5は、なんとFlappy Birdsゲームをワンショットで生成することができました。生成されたゲームは機能的で、オリジナルのFlappy Birdゲームにかなり忠実なUIと機能性を備えており、そのコーディング能力の高さを示しています。
• シンプルなToDoボードやタイムラインのコード生成: これだけでなく、シンプルなToDoボードやタイムラインなど、他のコード生成タスクでも非常に良い結果を出しています。
• PowerPointや基本的なフロントエンドの開発: GLM 4.5は、PowerPointのスライドや基本的なフロントエンドの開発においても優れており、多様な成果物をコードで生成する能力を持っています。
• フロントエンド開発の具体例:アニメーション付きPokemonカタログの作成: 特に印象的なのは、アニメーション付きのPokemonカタログをワンショットで作成できたことです。これは、単に静的なページを生成するだけでなく、動的な要素も組み込むことができる、GLM 4.5の先進的なフロントエンド開発能力を実証しています。
• SVGコード生成の進化:かつて困難だった蝶のSVGコード生成を高い精度で実行: かつてオープンソースモデルにとって非常に困難とされていたタスクの一つに、SVGコードで蝶を生成するというものがありました。初期のオープンソースモデルは、このタスクで壊滅的に失敗していましたが、GLM 4.5はこれを高い精度で実行し、美しい蝶のSVGコードを生成しました。これは、コード生成能力だけでなく、その幾何学的な空間推論能力、創造性、美的センスも評価できる点で注目されます。
• フルスタック開発のサポート:AI SASランディングページ(AIレジュメアプリ向け)の作成、Next.js、JS、Chad Cienneなどの技術スタックの活用: GLM 4.5は、ZAIのフルスタック機能を通じて、AIレジュメアプリ向けのAI SASランディングページを生成することも可能です。この際、Next.js、JS、Chad Cienneといった異なる技術スタックを組み合わせて使用し、非常に美しく、アニメーションやスタイルも基本的ながら優れたフロントエンドを作成しました。これは、単一のコードスニペットだけでなく、複数の技術を組み合わせた複雑なプロジェクトに対応できることを示しています。
エージェントツールとしての能力
GLM 4.5は、単なるテキスト生成やコード生成に留まらず、外部ツールと連携することで、より高度なエージェント機能を発揮します。
• ZAIチャットボットに搭載された追加ツール: GLM 4.5モデルをホストするZAIチャットボットでは、ウェブ検索、スライド作成、ワークスペース、画像検索といった複数の追加ツールが利用可能です。
• ウェブ検索機能の例:NVIDIAの最新終値の検索と迅速な回答: 例えば、「NVIDIAの最新の終値は何か」という質問に対して、GLM 4.5は自身の思考プロセスを開始し、ウェブ検索ツールを活用して迅速に正確な情報(例:176.75ドル)を回答することができました。これにより、リアルタイムの情報に基づいたタスクの実行が可能となります。
• AIスライド作成機能の例:「World of AI」YouTubeチャンネルのスライドデッキ生成、正確なチャンネル情報(登録者数、動画数、コンテンツカテゴリなど)の取得とHTMLコード生成: GLM 4.5は、単なる情報検索だけでなく、より複雑な成果物の生成も行います。例えば、「World of AI」YouTubeチャンネルに関するスライド作成を指示された際、モデルはウェブ検索などの3つのツールを駆使して、チャンネルの正確な登録者数、動画数、コンテンツカテゴリ(AIツール、コーディングアシスタンス、AIニュース、オープンソース、ノーコードAIエージェントなど)、人気の動画プレイリスト、最近のトレンドトピック、コミュニティエンゲージメント、関連チャンネルといった詳細情報を正確に取得しました。さらに、これらの情報に基づいてHTMLコードでスライドデッキを生成し、チャットボット内でライブ編集可能なコンポーネントを提供しました。これは、GLM 4.5が情報を収集し、それを整理し、視覚的なプレゼンテーションに変換する包括的なエージェント能力を持っていることを示しています。
これらの多様な機能と活用事例は、GLM 4.5が単なる大規模言語モデルではなく、実用的な問題解決とクリエイティブな成果物生成を可能にする強力なAIツールであることを明確に示しています。
4章:GLM 4.5の利用方法と価格
GLM 4.5シリーズは、その卓越した性能にもかかわらず、様々な方法で利用可能であり、そのAPI価格は非常にコスト効率が良いとされています。
GLM 4.5の利用方法
GLM 4.5を利用するには、いくつかのアクセス方法があります。
• APIプラットフォーム経由でのアクセス: GLM 4.5モデルにアクセスする最も直接的な方法の一つは、そのAPIプラットフォームを利用することです。これにより、開発者は自身のアプリケーションやシステムにGLM 4.5の機能を統合できます。
• Open Routerなどのプロバイダーを通じた利用: APIプラットフォームに加えて、Open Routerのようなサードパーティのプロバイダーを通じてもGLM 4.5 APIを利用することができます。これにより、ユーザーは複数のモデルを一つのインターフェースから管理できる利便性を享受できます。
• ZAIチャットボットでの直接チャット: GLM 4.5モデルは、ZAIチャットボット内で直接チャットして利用することも可能です。これは、コードを書かずにモデルの能力を試したいユーザーにとって非常に便利な方法です。
• オープンウェイトの提供とローカルでの利用: GLM 4.5のオープンウェイトも提供されています。これは、OllamaやLM Studioといったプラットフォームを通じて、より小規模なパラメータサイズの量子化版がリリースされることを意味しており、ユーザーはこれらのモデルをローカルでチャットして利用できるようになります。これにより、プライバシーを重視するユーザーや、独自の環境でモデルを動かしたいユーザーに柔軟性を提供します。
API価格のコスト効率
GLM 4.5およびGLM 4.5 AirのAPI価格は、その性能と比較して非常にコスト効率が良いと評価されています。
• GLM 4.5:
◦ 入力100万トークンあたり60セント
◦ 出力100万トークンあたり2.20ドル
• GLM 4.5 Air:
◦ 入力100万トークンあたり20セント
◦ 出力100万トークンあたり1.10ドル
これらの価格設定は、高性能な大規模言語モデルとしては「非常に安い」とされており、幅広いユーザーや開発者にとってアクセスしやすい選択肢となっています。
5章:結論:なぜ今GLM 4.5を試すべきか
GLM 4.5は、現在のAIランドスケープにおいて非常に注目すべきモデルであり、その性能、オープンソースとしての立ち位置、そして多機能性とコストパフォーマンスの高さから、今すぐにでも試す価値があります。
• 推論、コーディング、エージェントタスクにおいて他のモデル(Claude Opus、GPT-4など)に匹敵する、あるいは上回る性能 GLM 4.5は、その強力な能力により、既存のトップティアモデルと肩を並べるか、時にはそれらを凌駕する性能を示しています。
◦ 総合的な評価: エージェントタスク、推論、コーディングをカバーする12のベンチマークにおいて、全体で3位にランクインしており、OpenAI、Anthropic、Google DeepMindなどのモデルと競合しています。
◦ 推論能力: 数学やGPQAなどの推論タスクでは、Claude、GPT-4.1、Gemini 2.5 Proといったライバルを一貫して上回る性能を発揮しています。複雑な論理パズル(例:盗難事件の犯人特定)においても、詳細な思考プロセスを経て正確な答えを導き出すことができます。
◦ コーディング能力: Flappy Birdsゲームをワンショットで生成し、そのUIと機能性の精度が高いことが示されています。また、かつてオープンソースモデルにとって困難だった蝶のSVGコード生成を高い精度で実行するなど、その幾何学的な空間推論と美的センスも評価されています。さらに、Next.js、JSなどの異なる技術スタックを活用して、AI SASランディングページのようなフルスタック開発もサポートします。
◦ エージェント能力: ウェブ検索、スライド作成、ワークスペース、画像検索といった追加ツールをZAIチャットボット内で利用可能であり、NVIDIAの株価検索 や「World of AI」YouTubeチャンネルのスライドデッキ生成 のように、外部ツールと連携して複雑なタスクを高い精度で実行できます。
• オープンソースモデルの新たな最先端 GLM 4.5は、現在利用可能なオープンソースモデルの中で、**「新たな最先端 (New SOTA)」**として位置づけられています。
◦ これは、これまでのオープンソースモデルが苦手としていたタスク(例:SVGコード生成)を克服し、**オープンソースコミュニティにおける「王様」**と見なされるほどの進歩を遂げていることを意味します。
◦ また、オープンウェイトが提供されるため、OllamaやLM Studioといったプラットフォームを通じて、より小規模な量子化版がリリースされ、ユーザーはローカル環境でチャットして利用することが可能になります。これにより、プライバシーを重視するユーザーや、独自の開発環境でモデルを試したいユーザーにとって大きな利点となります。
• その多機能性とコストパフォーマンスの高さ GLM 4.5シリーズは、幅広い機能を提供しながらも、その利用価格が非常に手頃である点が大きな魅力です。
◦ 多機能性: 「推論、コーディング、エージェント能力を1つのシステムに統合する」ことを目指して構築されており、シンプルなToDoボードやタイムラインのコード生成、アニメーション付きのPokemonカタログ作成といった多様なフロントエンド開発、そしてフルスタック開発のサポート まで、多岐にわたるタスクに対応できます。また、ハイブリッド思考モードにより、タスクに応じて深い推論と高速な非思考型応答を切り替えることが可能です。
◦ コスト効率: APIの価格設定は**「非常に安い」**とされており、特に性能を考慮すると顕著です。
▪ GLM 4.5: 入力100万トークンあたり60セント、出力100万トークンあたり2.20ドル。
▪ GLM 4.5 Air: 入力100万トークンあたり20セント、出力100万トークンあたり1.10ドル。 これらの価格は、高性能な大規模言語モデルとしては破格であり、多くの開発者や企業にとって、コストを抑えつつ最先端のAI機能を活用できる機会を提供します。
これらの理由から、GLM 4.5は、その圧倒的な性能、オープンソースとしてのアクセシビリティ、そして優れた多機能性と経済性を兼ね備えており、現在のAI市場において試す価値のあるモデルであると言えるでしょう。
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