茶道、千玄室氏と裏千家が伝える平和への道

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I. はじめに:裏千家と千玄室氏の紹介

茶道裏千家は、千利休から続く茶道の一派であり、その歴史と精神は深く日本文化に根ざしています。裏千家第15代家元である千玄室氏は、1923年4月19日生まれで、2025年8月14日に102歳で亡くなりました。彼は茶道を通して、今日まで平和への強い思いを伝え続けていました。

II. 戦争の時代を生き抜いた:特攻隊員としての経験

太平洋戦争は1941年12月8日の真珠湾攻撃によって勃発し、日本は戦禍に突入しました。当時、大学生は徴兵が猶予されていましたが、2年後には兵力不足から学徒出陣が始まり、約10万人の学生が兵士として戦地へ向かいました。同志社大学の学生であった千玄室氏もまた、召集令状を受け取ります。出征前夜、父は千利休が切腹に用いた刀を千玄室氏に見せ、「不借身命(どんな時でも命を大切にし、捨てるべき時には捨てなければならない)」という教えを説きました。

1943年12月、千玄室氏は海軍に入隊し、徳島県の徳島飛行場で訓練を重ねた後、1年半後には自ら志願して特攻隊に入りました。入隊の際にも茶道具を持参していた彼は、徳島で後に俳優となる西村晃さんらと出会います。戦地では、仲間たちから「お茶にしてくれや」と頼まれ、配給の羊羹でお茶を点てていました。その中で、京都大学出身の仲間が「生きて帰ったら、本当の茶室で茶を飲ませてくれや」と語りかけましたが、その望みは叶わず、彼は帰らぬ人となってしまいました。千玄室氏は次々と飛び立つ仲間たちを見送り続け、亡くなった62人の仲間の顔が今も目に浮かぶといいます。彼らは「お母さん」と叫び、自分たちの死が親兄弟を助けることを願い、この戦争が早く終わることを切望していました。千玄室氏は奇跡的に生還し、終戦を迎えましたが、全国で6000人以上もの特攻隊員が戦死したと言われています。

III. 文化の力で世界へ:茶道による平和への貢献

1945年の終戦後、日本は連合国に占領されました。この時期、京都の裏千家には、日本の文化を知ろうとアメリカの将兵が訪れるようになりました。千玄室氏は彼らを正座させ、お茶を点てて振る舞う中で、「武」力では敗れても、「文」化の力であれば世界に勝ることができると確信し、武力ではなく文化で平和を目指すことを決意します。

1951年1月、千玄室氏はアメリカに渡り、各地で茶道を紹介しました。敵国であった日本の文化は、アメリカの人々に大いに歓迎されました。同年9月には、日本が独立を回復するサンフランシスコ平和条約が結ばれ、千玄室氏も日本の代表団に知人がいたことから、その歴史的な瞬間に立ち会うことができました。

その後も千玄室氏は茶道を通して世界の要人との交流を続け、イギリスのエリザベス女王や、当時のチャールズ皇太子とも対話しました。作家の三島由紀夫からは、特攻隊から生きて帰り、お茶を持ってニューヨークで再会できたことを喜ばれたエピソードもあります。三島由紀夫は、千玄室氏が一番のお茶を持ってどこへでも行き、それが世界の真の平和を築くという考えに共感を示しました。

終戦から78年が経つまでに、千玄室氏が訪れた国は70カ国以上に上ります。彼が作った茶室では、遠くウクライナの人々さえも心安らぐひとときを過ごしました。2023年4月に100歳を迎えた彼は、「丸いお茶の中にグリーンが入っている、それが地球だ」と語り、地球の緑がすべての人々を潤しているように、争いのない世界こそが真の平和であり、文の力こそがそれを実現できるという強いメッセージを発信し続けています。

IV. 茶道の奥深さに触れる:裏千家「風炉・薄茶点前」の基本

茶道裏千家の「風炉・薄茶点前」は、客をもてなす精神が込められた美しい一連の動作です。

  • 点前座の準備と心構え: まず、水差しを立て、一礼をして点前座に進み、風炉の右側に置きます。次に棗と建水を持ち出し、棗を水差しの手前に置き合わせます。杓を構え、蓋置を膝前、少し向こう側に置いた後、建水を上げて居住まいを正し、一呼吸置きます。
  • 道具の清め方: 茶筅を膝前少し向こう側に置き、棗を膝の間に置きます。袱紗をさばいて棗を清め、水差し正面の少し左側に置きます。袱紗をさばき直して茶杓を清め、棗の上に置きます。茶筅を棗の横に置き、点前座に弾きます。
  • お茶を点てる手順: 袱紗を指に挟み、杓を構えて釜の蓋を開けます。茶巾を取り、釜の蓋の上に置き、杓を持ち替え、湯を汲んで茶碗に入れます(沖柄杓)。茶筅通しをした後、茶筅を棗の横に戻し、茶巾で茶碗を拭きます。茶杓を取り、客に菓子を勧めます。茶杓を握り込み、棗の蓋を開けて茶を入れ、棗を戻し、茶杓を戻し、水指の蓋を開けます。水指のつまみを右手で取り、左手でその上を持ち、水指に水をかけます。杓を取り、湯を汲んで茶碗に入れ、残りの湯を釜に戻し、切り柄杓をします。茶筅を取り、茶を点ててから、茶筅を棗の横に戻します。
  • お客様への提供と拝見: 茶碗を右手で取り、左手のひらの上に乗せ、正面を客に向けて出します。客からの挨拶を受けたら、袱紗を腰につけます。茶碗が戻ったら、取り込み、湯を入れて沖柄杓します。湯を捨て、客から終いの挨拶を受け、改めて終いの挨拶をします。
  • 点前の締めくくりと水屋への下がり方: 杓を上から取り、水汲み、茶碗に入れ、終いの茶筅通しをします。杓を釜の上に、「引き柄杓」で戻します。茶筅を棗の横に戻し、茶碗を取り、水を捨てます。茶巾、茶筅を茶碗の中に戻し、茶杓を取り、建水を引き、袱紗をさばき、茶杓を清め、茶碗に伏せて少し左に置きます。その横に棗を置き、中閉めをします。袱紗を叩いて腰につけ、杓を上から取り、水汲み、釜に一杓し、構えた釜の蓋をし、杓を引きます。水指の蓋を閉めます。客から拝見の所望があれば受け、杓を建水に伏せて置き、蓋置を建水の後ろに置きます。茶碗を下げ、棗を持って客付に回り、膝前に置いて袱紗をさばいて清めます。袱紗を膝前に置き、棗の正面を正して出し、袱紗を腰につけます。点前座に戻り、茶杓を持ち、客付に回って茶杓を出します。点前座に戻り、杓、柄杓置きを持ち、膝下座に向き、建水を持ち、客付回りで水屋に下がります。建水を水屋に下げ、客は拝見物を見ます。茶碗を取り水屋に下がります。三つ足を持ち水屋に下がります。拝見物が戻る頃に茶道口に座ります。拝見物が戻ったら、拝見物の前に進み、一礼をして問答を受けます。問答が終わり、一礼をして棗と茶杓を取り、茶道口に下がります。茶道口に座り、杓と棗を立て付けに置き、一礼をして点前が完了します。

V. まとめ:茶道から学ぶ平和と共生の精神

千玄室氏の生涯は、戦争という極限の体験を乗り越え、茶道という文化の力で世界平和に貢献してきた普遍的な価値を示しています。茶道が育む「文」の精神は、争いのない共生の社会を築く上で、現代においても重要な役割を果たすことができるでしょう。

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